対象
書籍:「会社四季報」2020年1集新春号(ワイド版)
出版社: 東洋経済
発売日:2019/12/13
傾向として、秋号の「自動車の不振が全体の足を引っ張っている」から変わっていない
夏号の発売日が2019/9/19でしたので、
タイミングとしてその後の2020年3月期の第2四半期決算内容が取り込まれています。
全体の傾向として、四季報の言葉を借りれば、
「秋号の集計値と比較すると、全産業の利益は7.6%の下振れとなっています。製造業では、米中貿易摩擦の激化や円高傾向、商品市況安などが前号からの見通し悪化につながりました。」とのことですが、
読了の感覚として、一言でいえば、
「前号の自動車の不振が全体の足を引っ張っているから変わっていない」
ように思います。
次章で、全体としての傾向の変化をまとめています。
秋号から新春号への全体としての傾向の変化
全体としての傾向(秋号)のおさらい
- 人員不足に苦慮している
- 資材・運賃・人件費の高騰は一服
- 防災対策、高速道路の補修、太陽光発電工事など需要は底堅い
- 自動車向けは国内、海外とも不振
- スマホ向けは全般的に低調
- 半導体向けは概ね低調
- リチウムイオン電池関連向けの好調は一服
- M&Aには一層積極的
全体としての傾向(新春号)
人員不足への商機と転換が進む
人員不足という傾向は前号から変わっていませんが、引き続き、
- 社内の人材教育制度の拡充や海外からの技能実習生の受け入れ体制の確立など人を増やす仕組みづくりの方向と、
- 業務支援ソフトの導入や物流倉庫の自動化など少ない人数で解決していく方向
の二方面から対策が進んでいます。
そのため、業務支援ソフト導入のシステムサポートや物流倉庫の建設、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)、製造派遣・技術者派遣などに商機が見られ、
また、人材派遣から直接雇用への転換も進んでいます。
資材・運賃・人件費の高騰への対応進む
資材・運賃・人件費の高騰は一服は前号と変わりません。
費用の価格転嫁や、施工管理の徹底、採算重視の受注など、引き続き対応が進んでいるようです。
防災対策、高速道路の補修、ビルの空調工事など需要は底堅い
前回までの太陽光発電工事に変わって、ビルの空調工事の好調が目につきました。
また、防災対策、高速道路の補修など、引き続き建設業周りの需要は底堅いようです。
自動車向けは引き続き不振
自動車市場向け事業は全般的に不振です。
国内向けは若干戻ってきているように見えます。北米と東南アジアは一部に回復の兆し、欧州の落ち込みは変わらず、インドと中国は想定を超える減産で大きくマイナスの影響が出ているようです。
自動車関連の裾野の広さから、その低迷を受けて、機械、精密機械、電気機器、化学など広い業種で数量減の影響を受けている企業が、前号と変わらず各所で散見されています。
スマホ向けは全般的に低調(変わらず)
半導体向けは回復の兆し
生産調整が長引いていますが、回復の兆しが見られます。
冷夏や天候不順による需要の低下
ビールやその他飲料全般、アイスやデザートなど、冷夏や天候不順により需要が大幅に低下しています。
夏場のホームセンターの売り上げも減少しているようです。
M&Aには一層積極的(変わらず)
前号に続き、M&Aには一層積極的に見えます。
キャッシュが潤沢な企業が多い影響でしょうか。
株式市場にとって、とてもポジティブに見ています。
全体としての傾向まとめ
2019年第4集秋号 | 2020年第1集新春号 |
人員不足に苦慮している | 人員不足への商機と転換が進む |
資材・運賃・人件費の高騰は一服 | 資材・運賃・人件費の高騰への対応進む |
防災対策、高速道路の補修、太陽光発電工事など需要は底堅い | 防災対策、高速道路の補修、ビルの空調工事など需要は底堅い |
自動車向けは国内、海外とも不振 | 自動車向けは引き続き不振 |
スマホ向けは全般的に低調 | 変わらず |
半導体向けは概ね低調 | 半導体向けは回復の兆し |
リチウムイオン電池関連向けの好調は一服 | - |
- | 冷夏や天候不順による需要の低下 |
M&Aには一層積極的 | 変わらず |
後書き
秋号は発売から11日目の9/29、今回の新春号も11日目の12/23に読了となりました。
少しづつ早くしていくつもりでしたが、慣れて早くなるのと並行して目が行くところも増えてしまい結局は同じ日数かかってしまいました。
まとめとして、
自動車の不振が全体の足を引っ張っている印象は変わらず、他では建設業、特にビルの空調工事の好調が目につきました。
全体の傾向に続いてまとめた、業種別の動向についてはこちらです。
業種別に見ていくと、前号の秋号との比較で、目について良くなったのは金属製品、悪くなったのは鉱業です。 半導体はやや回復基調ですが、自動車の需要減少が想定超で広い業種に影を落としています。
最後に、お断りですが、
「人は見たいものしか見ない」生き物ですので、業種について偏りや抜け、また情報の曲解も間違いなくあると思います。
その点については、優しい目でご了承いただければ幸いです。
ご参考までに、秋号のポイントまとめはこちらです。