(当記事は2019年に作成した分析に、企業を追加し2020年の直近のデータで更新したものです。)
スーパーマーケットの競争力
商圏のお客さまをどれだけ囲い込めるか
各店舗の商圏の中で、お客さまをどれだけ固定客として囲い込めるか、適当な頻度で通ってもらえるかが勝負になります。
一度、店舗への来店を生活のサイクルに組み込んでもらえれば、安定して売り上げが見込めます。
小売の中でも、レストランなど離れた人気の店など探していろんな店舗に行くのとは異なり、限られたエリアの中で安心して買い物ができる、同じ店舗に行く傾向が圧倒的に強いです。
そのため、これはスーパーマーケットに限らずドラックストアチェーンなどでも同様ですが、「ドミナント戦略」をとっているケースが良く見られます。
「ドミナント戦略」とは一言でいえば、地域を絞って集中出店することです。メリットは
地域での認知度が高まる、
配送効率が上がる、
店舗の管理がしやすい
などありますが、私は一番のメリットは競争が無くなる(穏やかになる)点と見ています。
徒歩や自転車でいける範囲は限られていますので、その中で競合となる他のチェーンがいなければ(少なければ)過度な競争をせずに、(お客さまの視点から見れば迷惑な話ですが、)安定して収益を得られる価格設定を維持できます。
売上高営業利益率の推移で中長期の状況を把握
一旦、囲い込みができれば、商圏が広い他の小売業に比べ、そんなに売上が急激に変わるものではありません。
投資対象としてみた場合、業績の浮き沈みも激しくないため、中長期で買いやすいセクターではないかと思います。
徐々に売上が増えていくのが理想ですが、それと同様かそれ以上に、過度な競争にさらされず安定したマージン(利益率)を得られているかが重要です。
よって売上高営業利益率の推移をみることで、その企業が中長期に置かれている状況を把握できると考えられます。
それでは見ていきましょう。
比較対象
首都圏近郊の一般的なスーパーマーケットを運営している以下の企業を選びました。
3222 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(「マルエツ」、「カスミ」他運営。イオン系列。以下USMH。)
3539 JMホールディングス(「ジャパンミート生鮮館」、「肉のハナマサ」など運営。以下JMH。)
7520 エコス(他に「たいらや」など運営。)
8182 いなげや(イオン系列。)
8194 ライフコーポレーション
8279 ヤオコー
大手のイオンとかイトーヨーカドーなどは外しています。イオン(8267)は業務内容の幅が広く利益の源泉の一つが金融だったり比較に適していないため、イトーヨーカドーを運営するセブン&アイ(3382)は主力がコンビニであるためです。また、実際に競合するエリア内で比較したいということもあります。
首都圏のスーパーマーケットといえば他にもサミットが有名ですが、住友商事(8053)の100%子会社のため検討に入れていません。
他にも比較に適した企業があれば加えていきます。今回の2020年データへの更新の際にJMH(3539)を追加しました。
売上高営業利益率の推移
グラフは、2月末決算データ(いなげやとヤオコーは3月末決算データ)で、売上高営業利益率の推移を見ています。

売上高営業利益率の水準としては、ヤオコーとJMHが約4%と抜きんでています。
エコスが3%を超えて緩やかに上昇中。続いてライフとUSMH、最後にいなげやの順です。
2016年以降、各企業ともほぼ同一水準で比較的安定して推移していました。足元でUSMHといなげやに下降が見られます。
投資対象の観点から適正な利益水準として最低でも2%、できれば3%ほしいと思います。
会社の規模の観点で売上高では、上からライフ、USMH、 ヤオコーが上位ですが、規模の大きさにより期待される効率性は、目に見える形で利益率には影響していないようです。
参考までに、売上高含め、その他のデータを添付いたします。
店舗数 | 売上高 | 営業利益 | ROE | 時価総額 | 予想PER | ||
3222 | USMH | 521 | 6,917 | 94 | 1% | 1,171 | 103.5 |
3539 | JMH | 85 | 1,206 | 49 | 12% | 561 | 17.6 |
7520 | エコス | 113 | 1,266 | 43 | 17% | 177 | 6.4 |
8182 | いなげや | 147 | 2,520 | 15 | 0% | 671 | 582.7 |
8194 | ライフ | 275 | 7,147 | 139 | 10% | 1,316 | 15.0 |
8279 | ヤオコー | 175 | 4,480 | 183 | 11% | 2,352 | 18.7 |
2020/02実績(いなげやとヤオコーは2020/03予測、JMHは2020/07予測)データ、金額の単位は億円。
(いなげやの店舗数にドラックストア「ウェルパーク」の約1360店は含まない。売上高に含まれる比率は約17%。)
まとめ
スーパーマーケットという業務形態では利益が中長期的に安定しており、年による業績の上下が少なめなので、やはり中長期で買いやすいセクターだと思います。
首都圏の6つの企業の売上高営業利益率の推移が比較的フラットであることから確認できました。
規模が大きいことによるメリットも、利益率にはあまり関係ないようです。
投資対象としては、安定高位の売上高営業利益率から、
ヤオコー、JMH、エコス、と考えています。
特に時価総額も低く、売上高営業利益率も緩やかに上昇中で、ROEが高いエコスに期待しています。
