概要
世紀東急工業株式会社(東急グループの道路舗装会社)
第70期:2019年3月期
定時株主総会:2019年6月21日
議決権行使の方法:総会出席
議決権行使の基準
暫定版ですが、以下の基本方針に基づいて議決権行使いたします。
株主提案
ストラテジックキャピタルから3件の株主提案が上がっています。第3~5号議案がそれにあたります。
第3号議案:資本コストの開示に係る定款変更の件
第4号議案:剰余金を処分する件
第5号議案:不祥事における第三者委員会の設置に係る定款変更の件
ストラテジックキャピタル、企業の取締役会、それぞれから意見表明がされています。
ストラテジックキャピタルホームページ 世紀東急への株主提案に関する特集サイト
https://www.seikitokyu.co.jp/dev/wp-content/uploads/2019/05/140120190508417886.pdf
世紀東急工業株式会社リリース 株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ
また、ストラテジックキャピタルから同意のお願いの手紙が届いています。
議決権行使の結果
第1号議案: 剰余金の処分の件(会社提案):反対
第4号議案: 剰余金を処分する件(株主提案):賛成
剰余金に関する第1号提案および第4号提案を合わせて確認します。
(会社運営状況及び会社提案)
一株当たりの配当金27円(中間配当無、総額約11億円)
前期の10円から17円(170%)の増配
配当性向約31%
期末の現金等残高約160億
自社株買いについて2019年5月に1億円規模で実施済
(株主提案)
一株当たりの配当金86円(中間配当無、総額約35億円)
提案そのものは実績EPS(小数点以下切り捨て、=86円)、すなわち配当性向100%となるように、会社提案の金額に差額を加えて配当するという提案
ストラテジックキャピタル側の意見のチェック
世紀東急は総還元性向30%が株主還元目標ですが、現状の株主還元水準が継続した場合、高いROEが低下していくことを避けることはできません。今の高いROEを維持向上させるため、配当性向100%を提案します。
(ストラテジックキャピタル 世紀東急の課題と解決案より抜粋)
現状の株主還元水準では、高いROEが低下していくという懸念は同感である。
但し、配当性向100%という数字は、わかりやすい分、言い換えれば利益をすべて配当にということになるため、反感を招きやすいのではないか。
取締役会側の意見のチェック
現預金については、事業投資を最優先にしながらも、売上高 2 か月分程度の健全な手元流動性を維持すべきであると考えております。
(中略)
自然災害など様々なリスクについても想定する必要があり、特に、社会資本整備の一端を担う企業として、自然災害発生時には、復旧活動への迅速な対応が期待されていることからも、これらのリスクを考慮した財務健全性の確保は、当社の存在意義、社会的信用の側面からも極めて重要な課題であると捉えております。
(世紀東急工業株式会社リリース 株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせより抜粋)
社会インフラを支える重要な立場を担う企業として財務健全性の確保が重要であることに同意する。
但し、なぜ売上高の2か月分としているかの説明がなければ、それが十分なのか過剰なのか判断できない。
また、株主提案に対する意見という立て付けにもかかわらず、提案株主の意見の根本であるROEの低下懸念について答えていない。コミュニケーションそのものができていないように見える。
双方の意見のまとめ
それぞれ、同意できる部分、できない部分がある。
企業側が主張する手元流動性の確保については借入金と自己資金のバランスで議論および対応できるとすれば、一方の、提案株主側のROE低下懸念について企業側はどのように見ているのか明確なメッセージが欲しい。
期末の現金等残高等から、株主提案の配当金額は企業の運営に問題になるような水準には見えず、企業側の一層のコミュニケーションを促すためにも、株主提案に同意することとしたい。
第2号議案: 取締役8名選任の件:反対
独立した社外取締役の割合は基準としている1/3を満たしていない(2/8)。
取締役に女性がいない模様で、また、選考理由の説明については過去の役職の羅列が主で具体性の観点で物足りない。
全体として改善を望み、提案に同意しない。
第3号議案: 資本コストの開示に係る定款変更の件:賛成
コーポレートガバナンスと資本コストの関係においては、資本コストの数値そのものを開示することよりも、資本コストを経営陣が意識し、その考え方を経営に反映させていくことが重要であると認識しております。
(世紀東急工業株式会社リリース 株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせより抜粋)
開示しないのであれば、それが企業または株主にとって好ましくない理由、例えば株主と情報を共有することのデメリットなどを示すべきではないかと考える。
基本的な立ち位置として、資本コストは経営陣がわかっていればよいとの主張は、株主とのコミュニケーションという観点から非常に残念に思う。
第5号議案: 不祥事における第三者委員会の設置に係る定款変更の件:賛成
それぞれの主張の詳細は省くが、議論の方向が、役職員に対する処分であったり、リニエンシー制度(カルテル・入札談合について、その違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合、課徴金が減免される制度)だったりに流れているように見える。
そもそも論として、複数の件についての公正取引委員会の立入検査、その後の排除措置命令、営業停止処分、課徴金納付命令を受けている時点で速やかに第三者委員会を設置できていない事実とその経営を疑問に思う。
期末の現金等残高について、5期前の2014年3月期末までは足元の1/3以下の50億円水準だった。足元の投資CFから有形固定資産の取得は年間20億円規模であり、資金のニーズの観点から現在の現金等残高はバランスを欠いているように見える。
配当性向30%では、足元の業績および来期の見込みを考えても、バランスは悪くなる方向でしかなく、会社提案には同意しない。